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船乗りはシラクサに集う(2)

 轟音と破壊音、顔を叩く水飛沫。軋む船体を宥めつつ舵を取ることだけに集中する。着弾させるわけにはいかない。水夫のほとんどは船体修理要員として他の船に出払っているのだ。今silverswordにいるのは船を動かす最小限の人間だけ。大砲は撃てるにゃ撃てるが、再装填にゃ時間がかかる。
「トマス、ディオに伝令! 尻尾か頭に当てることだけ考えろ! それ以外は撃たなくてよし、ってね!」
「了解です!」
「船長! 左舷ガレーが接近中!」
「わぁってる黙って動け!」
 轟音と共にガレー船から弾が降ってくる。幸い距離が遠かったせいもあり大部分は外れたがサブマストに一つが突き刺さった。舌打ち一つ、舵を切る。
「登れる奴いる!?」
「勿論!」
「張り替え急げ!」
「ラジャー!」
 言いながら視線は縦横無尽に洋上を走る。ケイロン船長の船が沈黙した。砲弾が提督である豆腐船長の船に刺さる。各船にはうちからの他にナータ船長の船からも補修人員が加わっているが、あちらの雨の様な砲撃に修理も追いついていないようだ。
 いよいよ覚悟するべきか、そう思った時、いきなり"それ"はやってきた。


 はっと顔を上げれば、海はとても穏やかだった。
 舵にもたれていた体を起こし、辺りを見回してみる。穏やかな波の海、風はやや頼りない横風、いつも通り私の髪の毛でしばらく遊んで去っていく。
 甲板へと目を走らせれば水夫達が横たわっていて、そのうちの何人かは私と同じ様にはっと身を起こしてきょろきょろと辺りを見回していた。
 背筋がぞっとした。
 今の今まで私達は海戦上の真っ只中にいたはずだ。あの砲弾が飛び交い剣の音が絶えない海の地獄に。それが今は何だ。辺りを見回してもオスマンの軍勢の姿はどこにもなく、それどころか豆腐船長達の船影さえ見えない。
「っ、人員確認!」
「りょ、了解!」
 わけのわからぬまま大声を出せば手近にいたシュウが身を起こし走り出した。同時に下から階段を駆け上がってきたディオとトマスが甲板に顔を出す。
「サヤ! これは」
「わかんないけど確認が先! ディオは船体、私は積荷を見てくる!」
「積荷なら僕が見てきます! 船長は甲板にいてください!」
「トマス、…わかった。迅速にね」
「了解っ!」
 知らないうちに舵をきつく握り締めていた。だがそうはしていられない。見える陸地から推測するにここはチュニス付近、とりあえずどこかに寄港した方が良いだろうと操舵を始めた。幸い見た感じ帆は大丈夫そうだ。だがそこにはあからさまに応急処置の後が見える。
 そうだ、当たり前だがあれは夢じゃない。確かに私は商会の皆さんと戦場にいたのだ。
 間を置かずディオ、シュウ、トマスがほとんど同時に私の所に戻ってきた。
「水夫は全員います。勿論他の船に乗った奴ら以外ですが。マギーんとこで手当て受けてる奴らもちゃんと数えました」
「船体も航行するには異常はない。ただ、…当たり前だが着弾跡がいろんな所にあった」
「積荷も十分あります。港で積んだ分より弾薬と資材がだいぶ減ってますけど」
「…そう…」
 悪寒が消えない。思わず両手で自分を抱き締めた時、メインマストの見張り台から声が降ってきた。
「船長! 三時方向に船団です!」
 一瞬、歯ががちりと鳴った。
「オスマンか!?」
 一瞬後の返答に、
「違います! 数は四つ、どの船の帆にも青薔薇の紋章!」
 私は安堵で崩れ落ちそうになった。
「提督達の船です!!」



「何が起こったんですか?」
 提督の船の船長室にいるのは私と提督を含め五人。無論、船団を組んでいた船長達だ。大きなテーブルを前に私は気持ち身を乗り出して各々の顔を見つめる。
 提督達は彼らの間で顔を見合わせ、そしてふうとそれぞれ溜息をついた。
「見当はついてる。"落ち"たんだよ」
「落ちた?」
 鸚鵡返しに問いかけると逆に聞き返された。
「サヤさん、意識が途切れる寸前のことは覚えてる?」
 私は口を引き結んで記憶を手繰り寄せる。
 確かその時は皆で帆の張り替えを終了した直後だった。位置を変えようと舵を握り締め左舷に目をやった時、さっと目の前が暗くなった。そして一瞬後には"ああ"なっていたのだ。
「…目の前が真っ暗になりました。次に気がついた時には、目の前にはオスマンの船も皆さんもいなかった」
「正確に思い出せる?」
「正確に…」
 呟いてはっとする。
 あれは突然目の前が暗くなったのではなかった。
「腕が、…いや、身体全体かな…動かなかった気がします。だけど船は進み続けて、舵を切ろうと思っても腕が動かなくて…
 その後海から、ううん、海よりもっと下だ、下の方から黒い物が」
 そう、あれはまさに"闇の中"に落ちた様な感覚。
「…結構昔から船乗りの間じゃ噂になってる。皆も経験あるだろう」
 提督の言葉に私以外の船長達が頷いた。
「船がひしめき合う戦場、かと思えば辺りに何もない凪の海、"それ"がいつ来るかはわからない。だけど統計的に、こういう人や船がたくさん集まった時に起こるのは確かだ」
「船乗りはそれを"落ち"ると呼んでる」
 ケイロン船長の言葉をオンマイビート船長が引き継ぐ。
「悪魔の手引きか、神様の気紛れか、でも"それ"は現実問題俺達にいつでも降りかかってくる。突然身体が動かなくなって、でも船は進み続け、そのうち世界ごと闇の中に落ちる。…そして気がついたら周りはなんてことない普通の海、ってわけだ」
「そんなことが起こり得るんですか?」
「あなたが今体験したことが証拠でしょ?」
 締め括ったのはナータ船長だった。
 信じられない、と呟いて私は口を閉じた。まさかそんなことが当たり前に起こるのだろうか? だったら目の前にいたオスマンの艦隊はどうなったのだろう。彼らもまた"落ち"たのだろうか? ならば、敵に対してこんなことを思うのはおかしいのかもしれないが、彼らは闇のそこから戻ってこれたのだろうか…?
「まぁ天災のようなもんだ」
 提督が極々気軽に言った。
「嵐と違って対処法はないが、"落ち"てそのまま帰ってこなかった奴はいない。帰ってきてすぐに俺達みたいに顔を合わせたり、後日別の港でお互いを確認したりね。だから気にすることはないんだ。確かに、かなり不気味だけどね」
「…ですけど…」
「それに、ここでいつまでも話し合っているわけにもいかない」
 顔を跳ね上げオンマイビート船長を見ると、彼は顎で船窓を指した。
「さっきうちの船からここに乗り込んでくる時、見張りがオスマン籍らしい船を見つけてる。戦は終わっちゃいないってことじゃない?」
「まあとりあえずシラクサに一端戻るか。補給もしなきゃならないし、一応総司令官に事態の確認をしておこう」
 各々が了解の旨を表しそこで船長会議はお開きになった。廊下を歩きつつ思考の海に潜りそうな私の背を、ナータ船長が軽く叩く。
「考えるのは後にしましょ。こうしてる間にもオスマンの船が近づいてるかもしれないし」
「そりゃそうですけど」
「まずはシラクサで補給! 辿り着くことを第一に考えないとね」
 私は自分より更に小柄なナータ船長の笑顔を見下ろし、自分自身も引きつった笑みを浮かべたのだった。
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| 船長の航海日誌 | 01:27 | comments:8 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

追記
本日(昨日?)はお疲れ様でした。さすがに眠いのでもう陸に上がります…。
※このコメントは近日中に削除します

| Saya-Abendlied | 2006/10/23 01:30 | URL | ≫ EDIT

昨日はボロボロでしたね(^^;;
うん、サーバーも、自分の動きも(笑)

被撃沈なしで仕事をこなしてたサヤさんは凄いですよ(^^

自分もリベンジでは頑張ります(^^;

| ケイロン | 2006/10/23 09:51 | URL | ≫ EDIT

お疲れ様です。初めてのイベントがあのような形になってしまって残念でしたね。イベント真っ最中に「落ち」たのは今回が初めてだったと思います。ラ・フロンテーラで人が増えたからでしょうか。
幸い「やり直し」があるようですので、今回のはいい予行練習と考えてまた次回頑張りましょう^^

| イルリナ | 2006/10/23 12:12 | URL | ≫ EDIT

再度^^
色々お疲れ様でした♪後でもう一度今回分のチャンスがあるみたいなので、また一緒に行きましょうね^^やっぱり商会で艦隊組むのは楽しいからね♪

| オンマイビート | 2006/10/23 17:32 | URL | ≫ EDIT

うんうん。友人同士の艦隊はいいですよねぇ(^^

でも昨日の戦功分はまるまる加算されるとすると(されないと・・・・痛過ぎ)、ワンチャンス増えたと思えば「落ち」まくったのも好意的に受け止められるかも(笑)?

| ケイロン | 2006/10/23 18:50 | URL | ≫ EDIT

皆様昨日はお疲れ様でした~! …いろいろと。
どうやら"落ち"る前の戦功は持ち越されるらしいですね。つっても私は遠くを周回しながら皆さんの船を修理してただけですが。
命がけで逃げれば沈みませんがその分相手も沈まないわけで、海戦の難しいところです。
次回は帆を青薔薇に染め上げて参戦する所存です。艦隊枠空いてたら是非ご一緒させてください。

| Saya-Abendlied | 2006/10/23 22:04 | URL | ≫ EDIT

3戦目は11/4オフ会当日でした(T-T

| ケイロン | 2006/10/23 22:14 | URL | ≫ EDIT

あらら。じゃあ尚のこと週末は頑張りましょう!

| Saya-Abendlied | 2006/10/24 22:15 | URL | ≫ EDIT















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